時の過ぎゆくままに⋯

まさかこの歌が似合う時間が来るなんて⋯

 

あなたはすっかり疲れてしまい
生きてることさえいやだと泣いた
こわれたピアノで 想い出の唄
片手で弾いては 溜息ついた

時の過ぎゆくままにこの身をまかせ
男と女が ただよいながら
おちて行くのも 幸せだよと
二人冷たい 身体合わせる

身体の傷なら 直せるけれど
心の痛手は いやせはしない
小指にくいこむ 指輪を見つめ
あなたは昔を 想って泣いた


時の過ぎゆくままにこの身をまかせ
男と女が ただよいながら⋯


パリのドゥ マゴで「これ以上の瞬間の時間はもう訪れないよ」とつぶやいた時

「嫌だぁ、これが最高の時間なんて、ただの久しぶりのお喋りために集まったに

 過ぎないのに⋯」

 

答えなかった、しかしわかっていた何故だかわかっていた、「永遠」とはある瞬間

にしか現れない事を。それがこの瞬間であって今までの経験の背理から直感的にわかっ

てしまったのである

20年後に彼女と偶然に出会い彼女もそれを理解したようである

 

≪時間は戻らない、としたら「永遠の一瞬」を摑むしかない、時間と和解する

 唯一の方法である≫

 

ナウルのたった一人の哲学者が遺した唯一の言葉である

そう言えば彼女の手首の傷は無事消えたのだろうか?