コロナ世界大戦ー「見えない生物バイトン」を思い出したー

中学時代に初めて読んだSF小説「見えない生物バイトン」と言うのがあった、とても恐怖を覚えたSF小説であったが今回のパンデミックによってその時の恐怖が蘇ってきた、2015年を舞台と言い「バイトン」の「狡猾さ」と言いまるで今回のコロナウイルス

 

 

によるパンデミックを予言していたかのようなSF小説である、

 

 


「物語はこうです。



2015年5月(原作が発表された1943年からすれば未来の話)。
世界中の高名な科学者たちが謎の自殺を遂げる。

最初はスウェーデンの科学者の「ペーデル・ビョルセン教授」。
死因は心臓発作。彼は2003年の学会で異常な論文を発表し、以来、学者仲間の笑い者となっていた。
続いてイギリスの「シェルダン博士」。死因は心臓停止。
三人目はドイツの「ルーサー博士」。心肺停止。
四人目はニューヨークの「メイヨ博士」。彼は自ら超高層ビルから投身自殺したのだった。

事件に興味を持ったマンハッタン銀行24階にある「特別財務局」に勤める「ビル・グレアム」は、偶然知り合った「アート・ウォール警部」と共に調査に乗り出す。

五人目はマンハッタンの物理学者「アービン・ウェップ教授」。
彼は心臓発作で死ぬ直前、誰もいない部屋の隅に向かってピストルを数発撃っていた。
六人目は同じマンハッタンの物理学者「デーキン教授」。
有名な「デーキン式立体写真計」の発明者だったが、高速道路事故で死亡した。
七人目はブルックリンの眼科医「リード博士」。
突然走るトラックに飛び込み即死。
彼の死体には左足に腰から膝まで「ヨードチンキ」が塗られていた・・・。

事件を追いかけていた「ビル・グレアム」と「アート・ウォール警部」は、有史以前より密かに人類に「寄生」していた不可視の生物「バイトン」の存在を知る。
彼らは「エネルギー生命体」で赤外線より長い波長のため、人の目には見えないのだった。
直径1メートルの球体で、その数は数億匹にも及んでいた。
彼らは人間を「家畜」として、人の「恐れ」や「怒り」などの「感情」を喰っていたのだ。
「人類がこの地球の主人ではないのか」。
「バイトン」の好物「恐れ」や「怒り」も、「バイトン」が人に生み出していたモノだった。
太古から人より高級な生き物がこの地球を支配していたのだ。

不可視の「バイトン」を見るためには、「ヨードチンキ」「メスカリン」「メチレンブルー」の「共同薬」を服用しなければならなかった。
連続事件とは、その秘密を知った科学者が次々と「バイトン」に殺されていたのだ。
さらにアイダホ州「シルバーシティ」のフィルム工場で「バイトン」を写真に写した「ウェッブ教授」が、3万人の街ごと吹き飛ばされてしまう。
彼は波長の長い電磁波をフィルムに定着させる研究をしていた。

こうして「バイトン」と人類の全面戦争が始まった・・・。

「バイトン」は人の心を読み、人を洗脳する力を持っていた。
「アジア軍」を洗脳した「バイトン」は、西欧諸国へと進撃させる。
小さな太陽のマークを付けた「アジア軍」の捕虜は叫ぶ。
「我々は太陽の子だ。我々が死んだら小さな太陽になるんだ」。

人類が「バイトン」に対抗する術はないのか。
そんな時、物理学者の「ファーミロー教授」が新聞の冷蔵庫の広告に印を残し、死んでいるのが発見される。
広告には「北極熊」のイラストが描かれていた。
北極熊。ポーラ・ベア。
ポーラライゼーション・・・。
偏光作用・・・?
それは一体何を意味するのか。
果たして人類は「バイトン」を倒す事が出来るのだろうか。



これは昔から「人類家畜テーマ」と呼ばれるSFの一つのジャンルで、「見えない生物バイトン」はその嚆矢となった作品であります。

興味深いのは、劇中「お化けや幽霊、空飛ぶ円盤、神隠しなどの怪現象はみな昔からバイトンの仕業だった」としている事です。
さらに「バイトン」の起源を、「他宇宙からの侵略者」説と、「元々地球で生まれた生物で、人間の方こそバイトンが他の宇宙から連れて来た家畜の子孫だった」と二つ論じている事です。

また「苦しみ」や「憎しみ」など人の感情を喰べる「バイトン」を、「青く光る吸血鬼」と呼んでいるのも面白い事です。
これはまるで。
これはまるで、「コリン・ウィルソン」の「宇宙バンパイア(1976)」じゃありませんか!!
「見えない生物バイトン」は私の大好きな「吸血鬼モノ」のSF版でもあったのです。

劇中、見えない「バイトン」を見るため、「ヨードチンキ」「メスカリン」「メチレンブルー」を微妙に配合し、それを「点眼」するのですが、これを私は「ヨードチンキ」すなわち「赤チン」を目に足らすと長い事思っていました。
「そりゃ死ぬほど滲みるだろうなあ・・・」と想像していたのです。


主人公「ビル・グレアム」は後にアメリカ大統領から国家秘密情報部員へ任命されます。
彼は「対バイトン戦」のリーダーとなるのです。
「バイトン」の弱点を探るため、生き残った科学者を「8つのグループ」に分け、それぞれ互いに知らない場所に移動させ、密かに研究を続けさせるってのも、とても格好良いのであります。
これは人の心を読む「バイトン」から身を守るためでした。

「教授が残した冷蔵庫の広告イラスト」や、「何故かバイトンが寄ってこない精神病院の低周波治療器」など、「バイトンの弱点」を暗示する謎も、とても魅力的でワクワクしたのでした。

私が読んだ子供向けには、所々に挿し絵が描かれ、各章の頭には「サブタイトル」が付けられていました。
これも格好良かったのです。
こんな感じです。


【第一部】
わたしはきっところされる
ヨードチンキのなぞ
高速道路の死
はらの中にいぬが
トラックにとびこんだ男
なぞの薬品
情報部員グレアム
原子爆発か
小さな太陽
見えない生物」

 

SYU'S WORKSHOP
ESSAY VOL.102
「見えない生物バイトン」
について

(2009年6月6日)より